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2013.09.05 (木)

反日韓国の直面する知られざる「内戦」

『週刊新潮』 2013年9月5日号
日本ルネッサンス 第572回

韓国の反日は常軌を逸している。竹島や慰安婦に関する根拠なき日本非難を世界に広めるべく、彼らは凄まじいエネルギーを注ぐ。理論的に日本に立ち向かえない分、感情論を燃え上がらせ日本非難の波を国際社会に広げるのだ。感情論の下で事実は置き去りにされ、米国各地に慰安婦の像建立が議論され、対日非難決議も可決され始めた。

今回驚いたのは国連事務総長、潘基文氏の発言である。8月26日ソウルで会見し、「日本の政治指導者は極めて深く自らを省みて、国際的な未来を見通すビジョンが必要だ」と述べ、日本を非難した。これに先立ち、歴史認識や領土問題に関した質問を受け、氏は安倍政権を念頭に「正しい歴史認識を持ってこそ、他の国々から尊敬と信頼を受けられるのではないか」とも批判した。

国家間で対立している問題について、国連事務総長が一方的な見解を示すのは中立性を欠く。重責を担う者に求められる公正さを忘れたお粗末な発言を聞けば、韓国や韓国人を成熟した国家国民と位置づけるのがためらわれるのは当然である。

相互不信に陥りがちな両国だが、日韓関係は双方にとっての国益である。韓国とどうつき合うべきかについて、真剣に考えなければならない。8月23日、私がキャスターを務める「言論テレビ」の番組でソウルから戻ったばかりの洪熒(ホン・ヒョン)氏の見解を聞いた。元駐日韓国公使の氏は現在桜美林大学客員教授である。

韓国の反日は日本で報道されている反日とは異なる次元にあると、氏は語る。反日より先に「韓国対反韓国」の内戦が展開中であることを知ってほしいと言うのだ。

「韓国では、いま政治の優先順位が狂っています。国会の半分近くを占める野党民主党が国会を出て街頭闘争を展開中です。彼らは去年の大統領選挙の結果を受け入れることが出来ず、朴槿恵政権を揺さぶるために北朝鮮の主張に合わせてデモをするのです。北朝鮮は朴氏当選直後から、大陸間弾道ミサイル発射や核実験を断行すると言い続けています。核を小型化しミサイルに搭載する日がいつ来てもおかしくない。数年前から激しいサイバー攻撃もしています。なのに、その敵と闘おうとせず、朴大統領を揺さぶるのは一体何故か」

座標軸の倒錯

洪氏は韓国が物事を正しく判断出来ない理由は長く続きすぎている戦争故だと断ずる。1945年に米ソによって朝鮮半島は二分され、以降も戦争状態が続いてきた。50年からの朝鮮戦争は終わっておらず、単なる休戦である。南北社会の各層各分野で戦いという非日常が68年間も続いた結果、国全体の価値観の座標軸がおかしくなったというのだ。

であれば、日本は逆の意味で座標軸の倒錯の中にあるのではないか。自力で国家国民を守れない国となり、米国に守ってもらう平和の中で68年暮らした。そのことの異常を異常と思わない日本も異常である。

「長すぎる戦争状態の下で韓国はストックホルム症候群に陥ったのです。誘拐犯に拉致され、最初は恐れるが、時間が経過すると誘拐犯と被害者の間に友情が生まれる。誰が脅威で敵かがわからなくなるのです」

韓国の真の脅威は北朝鮮であり、背後の中国だ。にも拘らず、朴大統領は中国に頼り、一方野党は朴大統領を攻撃して止まない。与党中枢には北朝鮮勢力が侵入し、政府に影響力を及ぼし、北朝鮮の意向を反映させた政策を立案、実行する力が働くのだ。盧武鉉・金正日首脳会談の議事録がその一例だと洪氏は言う。

07年の両氏の首脳会談議事録は盧大統領が30年間非公開を目論んだが、昨年から今年にかけて議論が起こり、6月に国家情報院が全議事録を公開した。結果、盧大統領が金総書記の手下であるかのような驚くべき姿勢で北朝鮮に韓国を無血開城で差し出す類の発言をしていたことが明らかになった。大統領府にあるはずの議事録全てが破棄されていたことも判明した。情報公開されたのは国家情報院が保管していた分だった。

「盧大統領の金正日に対する発言は韓国への裏切りです。情報公開を受けて本来なら当時の盧政権、及び盧大統領を支えた民主党が責めを負うべきですが、なぜか情報公開した南在俊国情院院長に非難が集中しているのです。北朝鮮の核ミサイルの実戦配備が時間の問題となっているいま、わが国の対外政策を担い、真っ当な情報公開を断行した国情院院長をクビにしろと国会が騒ぎ、マスコミも同調する。まさに異常です」

韓国の的外れな攻撃は日本に対しても同様である。慰安婦問題に関する不条理な非難に加えて、韓国最高裁はいま、戦時徴用に関して新日鐵住金など日本企業に対する個人賠償の請求を認める判断を示している。

1965年に日韓両国は、その国民(法人を含む)の財産、権利などに関する請求権は「完全かつ最終的に解決された」と確認済みである。にも拘らず、韓国の司法は国際条約を破棄するに等しい判断を示したのだ。

1ミリも譲ってはならない

条約によって「完全かつ最終的に解決」された件で新日鐵住金は1円の補償も払う必要はない。この場面でこそ、日本国政府が前面に出て日本企業を守らなければならない。

洪氏は言う。

「問題は解決済みです。韓国政府はそう言ってきました。いまもそうだと思います。そうでないと言っているのは韓国の司法、裁判官です」

氏は、韓国国民は民主主義と法治主義を守ろうとしているが、一方で、右のような異常事態が続発している、平和が長く続きすぎた日本には理解出来ないことが韓国で起きているのだと、危機感をあらわにした。

「憲法違反の法律が次々に作られているのです。たとえば憲法が厳然と禁じている遡及法を、韓国の司法はこの20年次々と作り北朝鮮の工作員らを無罪放免してきました。そのひとりが日本人の原敕晁さんを拉致したことで知られる辛光洙です」

韓国という主権国家が全力を挙げて逮捕した工作員を次々と釈放する異常事態が金泳三、金大中両氏らの時から進行中なのだ。この20年来、韓国という国家が転覆されかけている状況だと洪氏は示唆する。

こうした中で、日本が憎しみの対象とされることを、洪氏は「小さなこと」だと言ってのける。たしかに、日本は韓国状勢の厳しさを受けとめ、朝鮮半島政策を考えなければならないだろう。それは日清戦争前夜さえ想起させる容易ならざる状況である。

そうした中、眼前の問題として、対日不法請求を許すことがどれほどの悪夢であるかをわが国は肝に銘じなければならない。ここは文字どおり、1ミリも譲ってはならない局面である。政府は事の重要性を心に刻み、国際法に基づく明確な反論を直ちに発表すべきだ。

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